診療情報 
腎不全について
腎臓は、後腹膜腔と呼ばれるところにあるソラマメの形をした手拳大の臓器です。
血液に富んだ臓器であり大切な役割を果たしています。
腎臓の機能には表のようなものがあり、正常に働いているからこそ健康でいられるのです。
排泄 | 体に溜まった老廃物や毒素を除去する |
---|---|
調節 | 尿を出すことで体水分量をコントロールする 酸塩基平衡を調整し血圧をコントロールする |
産生 | 赤血球を造るホルモンなどを分泌する |
腎不全は、その名の通り腎臓が正常に機能しなくなった状態です。
腎不全になると以下のような症状が出てきます。
疲れやすい
頭が重い感じがする
食欲不振・嘔気・嘔吐・体重減少
皮膚が乾燥する
顔色が悪い
顔や足がむくむ
夜中寝付けない・昼間元気がない
健康診断で貧血と言われた
呼吸困難
どれも特異的な症状ではないため診断が難しいのですが、健康診断での尿検査などで以前に指摘を受けたことがあるかどうかが最も重要な診断の基準となります。
腎不全と言っても全てが透析を行わないといけないわけではありません。
透析を行う前の状態(保存期の慢性腎不全)の治療では、『食事療法』と『高血圧の治療』を行うことが最も重要になってきます。
『高血圧』は腎機能の悪化を急速に進行させてしまうため、食事療法(特に塩分)に気を使い血圧を正常の値にコントロールすることが重要です。
一生付き合っていく体です。
体調が優れない場合や表のような症状がある場合は医師に相談して、早めの対策や治療を行うように気をつけましょう。
血液透析とは…
末期腎不全の患者さんは、体中に毒素や老廃物が蓄積した状態になり、尿が排泄されず水分が体中に溜まってしまうため治療が必要になります。
血液透析とは、体に溜まった毒素・老廃物・水分を一度体外に導出して除去した後に体内へ返すという治療法です。
1週間に2~3回の頻度で、4~5時間かけて治療を行うため通院が必要です。
維持透析治療を行う患者さんは、動脈と静脈を体表近くで吻合した『内シャント』と呼ばれる血管を作成します。
この『内シャント』を用いて、1分間に100ml~250mlの血液を体外循環させ治療します。
血液透析導入時期の患者さんや緊急治療が必要な患者さんで『内シャント』がない場合には、血液透析専用のカテーテルを使用し治療を行うことが可能です。
当院では、血管手術の専門である心臓血管外科の医師に『内シャント』の作成を依頼しており、血管の評価を内科と心臓血管外科の両科の医師で行っています。
治療には『ダイアライザー』と呼ばれる人工腎臓を使用し、患者さんの体格・残存腎機能・毒素の除去効率などによって大きさや素材を変更しています。
血液透析に最も欠かせないものとして透析液というものがあります。
透析液は、エンドトキシンやパイロジェンと呼ばれる発熱物質・水道水に含まれる塩素などを全く含んでいない清潔な水で、清浄化が義務付けられています。
当院では、『透析液清浄化のガイドライン』に記載されている基準よりも、さらに清浄化された透析液を使用しており、患者さんに安全な透析を提供しています。
腹膜透析とは…
血液透析と同様に体に溜まった毒素・老廃物・水分を除去するという治療法です。
血液透析と異なり、自宅や職場で1日数回の定期的なバックの交換を行うことで治療を行うことができます。
病院への来院は、月に数回の外来診察で済むため、通院による身体的拘束は血液透析と比較して少ないと思われます。
腹膜透析治療を行う患者さんは、その名の通り患者さん自身の腹膜を使用して透析を行います。
腹膜透析を行うには、腹腔内にカテーテルを留置する『CAPDカテーテル留置術』という手術が必要です。
腹膜透析の大きな特徴は、全て自己管理で行う治療法という点です。
血液透析では透析室のスタッフが治療の管理をしていますが、腹膜透析では透析液のバック交換などを治療にかかわる全てを患者さん自身が行わなければなりません。
また、バック交換・消毒・入浴などはカテーテルを清潔に保ちながら行う必要があるため自己管理ができない患者さんには向かない治療法でもあります。
しかし、腹膜透析を選ぶ利点も多くあり、食事制限が少ないこと・血圧が比較的安定することなどが挙げられ、腹膜透析を選ばれる患者さんも数多くいらっしゃいます。
当院では、患者さんが腹膜透析を安全に行えるように専門の知識を持つ看護師が手順の指導を行っています。